浜松工業会浜松支部 平成20年度支部総会 松浦夫妻インタビュー

作成日【2008.7.28】

松浦夫妻インタビュー

5/17 2008年度浜松工業会浜松支部の年次総会当日、講演に先立って、松浦ご夫妻が控え室におられた時、3月にエンデバーに搭載して打ち上げた宇宙ステーションにおける日本実験棟(きぼう)を中心にインタビューしましたので、以下インタビューの概要につきまして、報告します。

(インタビュー担当;浜松支部 鈴木敏弘、小田 修、藤田幸宏)

文中回答のA(A)は松浦直人様、A(B)は松浦真弓様が回答をしています。
【宇宙関連】

Q1JAXAは広報関連にかなり力を注いでいるようにみえますが、意識して広報活動を展開しているのでしょうか。 たとえばSTS-123(*1)フライトのとき、福田総理と土井さんとのインタビューをテレビや大型画面で放映したり、全国に宇宙飛行士を派遣して講演会を開いたり、またHPをとおして過去のフライトをビデオ等で公開したり、数多くの啓蒙活動を行っています。
A(B)広報に確かに力をいれています。専門家でないかぎり、宇宙は一般にわかりにくく、みなさんに具体的に何をやっているかわかり易く伝えたいからです。今回のシャトル打ち上げのミッションの内容とか、実験に関するいろんなニーズがありますので、ラジオ・テレビ・HP等で情報公開して、皆さんに積極的に見て、理解していただくためです。また、やがてこれから強力な応援団になってくれる子供たちに向けても、興味を持ってもらうために力を注いでいます。
Q23回のシャトル打ち上げで国際宇宙ステーションに建設する日本実験棟(JEM(*2)・きぼう)について
2-1搭乗する3人の宇宙飛行士(土井・星出・若田;敬称略)はみんなメカが好きで、手先の器用な技術屋さんというイメージがあり、向井千秋(*3)さんのような研究者ではない印象があります。いかがですか。
2-2100にも及ぶ宇宙実験装置を搭載するそうですが、目玉あるいは面白そうなものは何かありますか。
2-3欧州宇宙機関が2月にアトランティス(*4)で上げたコロンバス(*5)にも似たような実験装置があったようでしたが、開発競争がやがて激しくなりそうですが、どのような状況でしょうか。
A(B)
2-1どうですかね。色んな分野の人たちがいて建設屋さん、技術屋さん、研究者などいろいろな分野の人がいますし、特に特定はしていません。飛行士によって興味の範囲が違っていますが、一旦宇宙にいったら、自分達で全部やらなければなりませんので、機械屋さんであろうと、電気屋さんであろうと、研究者であろうとなかろうとすべてができなければいけません。
2-2(インタビューの時には、直接お話を頂けませんでしたが、可能であれば、目玉の実験装置、また実験のテーマをいくつかテーマあげていただきたく思います。) 「きぼう」の中で最初に行われる予定の実験は、微小重力環境での流体(気体、液体)の物理現象を観測する実験です。成果は、半導体製造や薬品、食品の開発・製造に役立てられます。この他にも、今後は微小重力環境が植物や生物に与える影響を観測する実験や、国際宇宙ステーションの外に取り付けた装置を使って、地球や地球の周りの宇宙環境など観測する実験なども計画されています。また、そういった科学的な実験ばかりではなく、宇宙飛行士が快適に生活できるような衣服の研究や日本食など宇宙食の研究も進められます。
2-3宇宙での研究開発競争が激しくなっていくことは良いことだと思います。各国競争して切磋琢磨していろんな実験をする。国際宇宙ステーションは「みんなで使いましょう」という場所ですから秘密にする必要は全くありません。お互いの実験結果を知らせて同じことをやらないように、互いに協力して無駄を省いて別の実験をしましょうとやっています。ここISS(*6)は研究の協力機関のような場所です。
Q3先の1J/A(*7)ミッションにおいて、3/11のエンデバー打ち上げ後30分でISSの軌道に載り、それからISSにドッキングするが3/13となっています。ISSは地上400kmの距離にあり、東京〜米原位の距離ですが、途中で「熱防護損傷検査」をしたとはいえ、到達まで時間がかかりすぎのように思えます。 帰還時も同様、中1日かかっています。
A(B) 力学的に最も効率のよい方法でISSにシャトルがたどりつく方法をとっています。シャトルがたくさんの燃料を積載してどんなに重くなっても良いならばあっという間に到達することは可能です。しかし、実際には搭載できる燃料の量には限界があるので、燃料を使って無理やりISSに近づくのではなく、自然の物理的方法、つまりシャトルの周回する軌道を上手くつかって近づき、ちょっとだけ燃料をつかってドッキングするから時間が掛かるわけです。
A(A) ISSも静止しているのではなく、秒速7km(25200km/h)で回っているので、シャトルとドッキングするのはとても大変なことです。
Q4宇宙飛行士の募集についてお尋ねします。
A(B) 1998年に山崎直子さん(未搭乗)、星出彰彦さん(STS124フライトに搭乗)、古川 聡さん(未搭乗)の3名を宇宙飛行士として採用しました。この3人はISSで活動することを前提にして初めて採用した宇宙飛行士です。2008年には、新規飛行士の募集開始しています。(JAXAのHPおよび週間アスキー(2008.5.13-20)に掲載)
【運用管制】
まず、5/16「きぼう」日本実験棟の運用管制チーム(JAXA Flight Control Team: JFCT)と、1J/A(STS-123)ミッションで主担当J-Flightを務られましたフライトディレクタ松浦真弓様が、1J/A(STS-123)ミッションへの貢献が称えられ、NASAから表彰されましたこと、心からお祝い申し上げます。「追っかけ人生の集大成」とおっしゃっておりましたが、まさにその通りになっていると思います。
Q5主担当のディレクタの松浦真弓様を含む4人が3交代で勤務されたと聞いておりますが、各システム(電力、通信、生命維持,等々)の担当者とのコミュニケーションが大変だったと思いますが、いかがでしたでしょうか。
A(B) 飛行士は1日の勤務時間、睡眠時間、休憩時間がきまっております。しかし管制システムは常に動いておりますので、3交代で24時間、365日監視を継続しなければなりません。今まだ実験が完全に始まっておらないので2〜3人で監視しているのみですが、実験が始まると数十人の体制で監視することになります。
Q6土井さんのメッセージでISSに足を踏み入れた時に言った「自分の1歩は小さな1歩だが日本の科学技術にとっては…大きな1歩」を、実際に確認しましたか。(40年前のアポロ11号船長アームストロングが月面に立った時の言葉)
A(B) もちろん、確認しました。アポロ11号のアームストロング船長が月にいったことにくらべればずっと手前ですが、日本が作った最初の宇宙実験室に日本人宇宙飛行士が第一歩を踏み入れたことは月に踏み入れたことと同じ位の歴史的瞬間なので、実験室の入口に立ったとき「是非何か一言いってください土井さん」と言ってあったんです。どうやって考えて土井さんがあの言葉を言ったのかは分かりませんけれど、とにかく、あの言葉をいってくれました。
【その他】
Q7コロンビア号、チャレンジャー号墜落以来、縮小気味の宇宙開発が、昨年の月探査機「かぐや」あたりから盛り上がりみせているように思います。これもHU型ロケットが安定してきたせいかなと思いますが、いかがでしょうか。
A(A) 今までH-II、H-IIAとも打ち上げ6回目に失敗しました。少し上手くいきかけては失敗。しかしH-IIAロケット12号機でようやくこれを乗り越え、打ち上げの成功が続いています。JAXAの中でも少し安心感が芽生え、手応えを感じてきており、人工衛星が本来あるべき姿としての役割は何か、こちらの方に話が移ってきています。
Q7-1HU型ロケットを有人ロケットにする考えはありますか。
A(A) 有人はまだです。ようやく議論がはじまったばかりです。有人と無人とでは規模に大きなギャップがあります。今の数千億円の予算ではとても無理で、他国と共同で開発するかとか、まだまだこれからだと思います。
Q8今年夏洞爺湖サミットあります。温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT」の打ち上げは非常にタイムリーに思えますが、いかがでしょうか。
A(A) 残念ながら打ち上げは少し延びてしまいましたが、この衛星への注目度は非常に高いです。技術的に難しい衛星で、一般受けしなく専門家向けなところがありますが。GOSATのキャッチフレーズを【地球の呼吸を見る】としています。地球上の炭酸ガス、メタンガス濃度分布を調べたり、どこでどれだけ温室効果ガスを吸収、排出しているか、精度よく測定する技術を確立しようとしています。
Q91か月前 内閣府に来年宇宙局を作ると発表。 北朝鮮を意識しての偵察衛星の開発でしょうか。
A(A) 偵察衛星は既に何機か上っています。しかしわれわれは具体的なことは全く知りません。来年の宇宙局は2つの目的があり、1つは今言った「安全保障」と、もう1つは「産業育成」です。 宇宙開発の実験・研究よって得られた成果が世の中にもっと役立てられないか。民間企業を含めて協力体制を作ることも必要です。我々JAXAは文部科学省の下にあって研究開発が主体です。今まで「安全保障」や「産業育成」とは、少し隔たりがありました。今回の宇宙局はその距離を縮めようとするのです。
Q102010年STS-133のフライトでスペースシャトルの計画は終了、その後HUB型ロケットで物資輸送するそうですが、いかがでしょうか。
A(B) 2010年でシャトルの計画が終るかどうかまだはっきりしておりません。ISSはそのまま残るわけですから。HUB型ロケットで、「HTV」と云う特殊な物資輸送機を打ち上げ、飛行士の活動に必要な物資を運ぶ計画です。ヨーロッパ宇宙機関も同様の計画を実施しています。
以上、本日のインタビューを終了させていただきます。講演前のお忙しい中、大変ありがとうございました。
(注)
(*1):Space Transportation Systemの略 スペースシャトルのフライトミッション番号←「XX回目」とは一致しませんので、この説明は不正確です。(http://iss.jaxa.jp/iss_faq/faq_sts_01.html を参照ください。)
(*2):Japan Experimental Module の略 即ち日本実験棟「きぼう」のこと。ModuleとはISSに取り付けられる部品(実験棟)をさす。
(*3):日本の初の女性宇宙飛行士(コロンビア号STS-65フライト。1994)
(*4):今年2月(STS-122)打ち上げたシャトル
(*5):アトランティスに搭載された欧州実験棟
(*6):International Space Stationの略 国際宇宙ステーションで2010年の完成を目指し、アメリカ、ロシア、日本、カナダ、欧州宇宙機関が参加。
(*7):日本の宇宙実験棟「きぼう」を宇宙に運ぶミッション名
1J/Aミッション:土井飛行士が搭乗したSTS123フライト
1J/ミッション:星出飛行士が搭乗したSTS124フライト
2J/Aミッション:若田飛行士が搭乗するSTS127フライト(若田宇宙飛行士は、15Aと呼ばれるミッション(シャトルのフライト名はSTS-119)で宇宙ステーションに行き、2J/Aミッションのスペースシャトルが来るまでの間、宇宙にずっと滞在します。)
J:Japan A:America

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